介護・老人ホーム

親が認知症になる前にやっておきたいこと|家族で準備するチェックリスト

「最近、親の物忘れが少し増えた気がする」

「認知症になったら、お金や実家の管理はどうなるんだろう?」

「元気なうちに何を話しておけばいい?」

親が年齢を重ねると、認知症について考える機会も増えてきます。

しかし、

「まだ元気だから大丈夫」

「認知症の話なんて縁起が悪い」

と、つい先送りしてしまう家庭も少なくありません。

認知症への備えで大切なのは、認知症になってからすべてを考え始めるのではなく、本人が自分の希望を伝え、判断できるうちに家族で話しておくことです。

お金のこと、実家のこと、介護のこと、これから住みたい場所、もしものときに頼りたい人。

全部を一度に決める必要はありません。

この記事では、親が認知症になる前に家族で確認しておきたいことを、順番にわかりやすく解説します。


認知症になる前の準備は、なぜ必要?

認知症などによって判断能力が低下すると、さまざまな契約や財産管理を一人で行うことが難しくなる場合があります。

厚生労働省も、認知症などで一人で決めることに不安がある人について、預貯金や不動産などの財産管理、介護・福祉サービスや施設入所などの契約を一人で行うことが難しい場合があると説明しています。

だからこそ重要なのが、

「本人がどうしたいのか」を元気なうちに確認すること。

認知症への備えは、家族が本人に代わって勝手に決めるための準備ではありません。

将来もできるだけ本人の希望に沿った暮らしを続けるための準備と考えてみましょう。


親が元気なうちに確認したい8つのこと

まずは全体像です。

準備しておきたいこと
①本人の希望を聞く
②お金・財産を整理する
③銀行口座などを確認する
④実家・不動産について考える
⑤医療・介護について話す
⑥将来の住まいを考える
⑦遺言・相続について整理する
⑧必要に応じて任意後見などを検討する

ポイントは、一度の話し合いですべて決めようとしないことです。

できるところから少しずつ進めましょう。


① まず「これからどう暮らしたい?」を聞く

いきなり、

「認知症になったらどうする?」

と聞くと、親も身構えてしまうかもしれません。

まずは、

「これからもこの家で暮らしたい?」

「もし一人暮らしが大変になったらどうしたい?」

「施設に入るとしたら、どんなところがいい?」

と、これからの暮らしについて話すところから始めてみましょう。

→ 関連記事:親の終活、どう切り出す?嫌がられにくい話し方とタイミング

本人が元気なうちは、

「まだそんなこと考えなくていいよ」

と言うかもしれません。

それでも、一度話題にしておくだけで、次の会話につながりやすくなります。


② お金・財産を整理しておく

認知症になる前に確認しておきたいことの一つが、財産の全体像です。

たとえば、

  • 預貯金
  • 不動産
  • 株式・投資信託
  • 生命保険
  • 年金
  • 借入金
  • クレジットカード
  • その他の契約

などです。

ここで重要なのは、

「親のお金を子どもが管理する」ことを目的にしないこと。

まずは、

何を持っているのか

重要な書類はどこにあるのか

を本人と一緒に整理するところから始めます。


③ 銀行口座を確認しておく

親が判断能力を失った場合、

「子どもなんだから自由に親の口座からお金を引き出せる」

とは限りません。

金融機関では本人確認や代理権の確認などが必要となるため、家族だからという理由だけで自由に取引できるわけではありません。金融庁でも、認知・判断能力が低下した顧客本人や家族による金融取引について、本人の財産保護を踏まえた対応が検討されてきました。

親が元気なうちに、

  • どこの銀行を利用しているか
  • 何のための口座なのか
  • 年金が入る口座はどれか
  • 公共料金の引き落とし口座
  • 利用していない口座がないか

などを整理しておくとよいでしょう。

また、金融機関によって代理人制度などの仕組みが異なる場合があります。

必要なら、本人と一緒に利用している金融機関へ相談しておく方法もあります。


④ 実家・不動産について考える

認知症と実家の問題は、実は深く関係しています。

たとえば親が老人ホームへ入居し、

「実家を売って施設費用に充てよう」

と家族が考えることもあるでしょう。

しかし、不動産の売却は重要な法律行為です。

本人の判断能力の状態によっては、本人だけで契約を進めることが難しくなる可能性があります。成年後見制度では、不動産や預貯金の管理なども支援対象となり得ます。

だからこそ、

実家に住み続けたいのか

施設へ入ったら実家をどうしたいのか

将来的に売却する可能性があるのか

などを元気なうちに話しておくことが大切です。

→ 関連記事:実家じまいとは?いつから始める?


⑤ 介護について話しておく

認知症になったからといって、すぐ老人ホームへ入るわけではありません。

介護サービスなどを利用しながら、自宅で生活を続ける方もいます。

そのため、

「できるだけ自宅で暮らしたい」

「子どもには介護の負担をかけたくない」

「一人暮らしが難しくなったら施設を考えたい」

など、本人の希望を聞いておきましょう。

→ 関連記事:親の一人暮らしが心配|離れて暮らす家族ができる見守りと備え


⑥ 老人ホームについても早めに話す

「老人ホームなんてまだ早い」

と思うかもしれません。

しかし、施設について調べることと、今すぐ入居することは別です。

元気なうちなら本人自身が、

どの地域がいいか

どんな部屋がいいか

どんな生活をしたいか

を考えることができます。

いくつか施設を見学して、

「こういうところならいいね」

と話しておくだけでも、将来の選択肢になります。

→ 関連記事:老人ホームの入居は何から始める?施設選び・費用・入居までの流れ


⑦ エンディングノートを活用する

親といきなり、

「財産を全部教えて」

と話すのは難しいものです。

そこで役立つのがエンディングノートです。

エンディングノートには、

  • 自分の基本情報
  • 家族・親族
  • 医療
  • 介護
  • 財産
  • 保険
  • 葬儀
  • お墓
  • 大切な人へのメッセージ

などを整理できます。

認知症のためだけに書くものではなく、これからの人生について考えるノートとして使えます。

→ 関連記事:エンディングノートとは?何を書く?


⑧ 遺言書について考える

財産の相続について本人の希望がある場合には、遺言書について考えておくこともできます。

ただし、

「認知症になったら絶対に遺言書を書けない」

と単純に決まるわけではありません。

遺言では、作成時に遺言をするために必要な能力があったかが重要になります。

そのため、

「いつか書けばいい」

と先送りするより、本人に明確な希望があるなら十分に意思を示せるうちに検討するのがよいでしょう。

→ 関連記事:遺言書とは?種類・書き方・見つけたときの注意点


「任意後見制度」も知っておこう

認知症になる前だからこそ検討できる制度の一つに、任意後見制度があります。

任意後見制度とは、本人に十分な判断能力があるうちに、

「将来、自分の判断能力が低下したら、この人にこういうことを任せたい」

と、任意後見人となる人や任せる事務をあらかじめ決めておく制度です。契約は公正証書で行います。

実際に本人の判断能力が不十分になった後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見契約の効力が生じます。


任意後見と成年後見は何が違う?

大まかに整理すると、

任意後見法定後見
準備する時期判断能力が十分なうち判断能力が不十分になった後
支援する人本人があらかじめ選ぶ家庭裁判所が選任
任せる内容本人が契約で決める制度・審判に応じて決まる
家庭裁判所任意後見監督人を選任成年後見人等を選任

法務省も、法定後見と任意後見の大きな違いとして、任意後見では本人が十分な判断能力を有するうちに、任意後見人や委任する事務を決めておけることを挙げています。

どちらがよいかは本人の財産や家族関係、希望などによって異なります。

必要に応じて、地域の相談窓口や専門家へ相談しましょう。


身元保証についても考えておく

将来、老人ホームへの入居や入院などで、緊急連絡先や身元保証人などについて確認される場合があります。

「子どもがいるから大丈夫」

とは限りません。

子どもが遠方に住んでいる場合や、頼れる親族がいない場合もあります。

本人が元気なうちに、

誰に何をお願いできるのか

を整理しておきましょう。

→ 関連記事:高齢者の身元保証人とは?

→ 関連記事:身元保証サービスとは?


デジタル関係も忘れずに

最近は、重要な情報がスマートフォンやパソコンの中だけにあることも珍しくありません。

たとえば、

  • ネット銀行
  • ネット証券
  • ネット通販
  • サブスクリプション
  • 電子メール
  • SNS
  • スマートフォン契約

などです。

ただし、パスワードそのものを誰でも見られる場所に書いておくのはおすすめできません。

どんなサービスを利用しているか、必要なときに家族が存在を把握できる方法を考えておきましょう。


「認知症かも?」と思ったら早めに相談

物忘れが増えたからといって、必ず認知症とは限りません。

しかし、

「同じことを何度も聞くようになった」

「今までできていたお金の管理が難しくなった」

「慣れている場所で迷うようになった」

など、以前とは違う変化が気になる場合には、自己判断だけで済ませないことも大切です。

厚生労働省は、認知症が疑われる場合の相談先として、地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センター、もの忘れ外来などを案内しています。

地域包括支援センターはすべての市町村に設置されています。


親が認知症の話を嫌がったら?

これは珍しいことではありません。

「認知症になる前に準備しよう」

と言われると、

「ボケたと思っているの?」

と感じてしまう可能性があります。

そこで、認知症だけをテーマにしないのがおすすめです。

たとえば、

「もし入院したら、どこの病院に連絡すればいい?」

「この家は将来どうしたい?」

「保険ってどこに入ってる?」

「私もエンディングノートを書こうと思ってるんだけど、一緒にやらない?」

と、日常的な話題から少しずつ始めます。

「あなたのために聞いている」ではなく、

「家族みんなで困らないように整理しておこう」

という話にすると切り出しやすくなります。


家族で共有しておきたい情報

最低限、次の情報がどこにあるのか確認しておくと安心です。

分野確認しておきたいこと
医療かかりつけ医・持病・薬
介護希望する介護・住まい
お金主な銀行・年金・保険
不動産実家・土地など
連絡先親族・知人・専門家
契約電気・ガス・通信など
終活遺言書・エンディングノート
緊急時誰へ最初に連絡するか

すべての情報を家族全員が持つ必要はありません。

「必要になったとき、どこを確認すればわかるか」

という状態を作っておくことが大切です。


親が認知症になる前のチェックリスト

確認すること
□これからどこで暮らしたいか聞いた
□介護について希望を聞いた
□かかりつけ医を把握した
□主な銀行口座を確認した
□年金について確認した
□生命保険を確認した
□不動産を確認した
□借金・ローンの有無を確認した
□重要書類の場所を確認した
□エンディングノートについて話した
□遺言書について考えた
□任意後見制度について知った
□緊急連絡先を決めた
□将来の老人ホームについて話した
□実家をどうするか話した

一度ですべて埋める必要はありません。

年に一度、家族で確認するくらいでも十分な第一歩です。


よくある質問

Q.親が元気でも認知症への準備を始めていい?

もちろんです。むしろ本人が自分の希望を伝えられるうちだからこそ、将来の暮らしや財産管理などについて話しやすいことがあります。

Q.親の銀行口座を子ども名義にしておいた方がいい?

安易な名義変更はおすすめできません。贈与や相続など別の問題につながる可能性もあります。将来の管理が心配なら、まず本人と金融機関に相談し、利用できる仕組みを確認しましょう。

Q.認知症になったら家族が実家を売れますか?

家族だからという理由だけで、本人所有の不動産を自由に売却できるわけではありません。本人の判断能力や代理権などが問題になります。将来的な売却を考えているなら、元気なうちに専門家へ相談しておくと安心です。成年後見制度では財産管理や契約などを法律的に支援する仕組みがあります。

Q.任意後見は認知症になってから契約できますか?

任意後見制度は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来任せたい人や事務を契約で決めておく制度です。 判断能力がすでに低下している場合には、法定後見制度など別の仕組みを検討することになります。

Q.物忘れが増えたらどこに相談すればいい?

まずはかかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談できます。厚生労働省では、認知症疾患医療センターやもの忘れ外来なども相談先として案内しています。


まとめ|元気な今だから話せることがある

親の認知症について考えるのは、家族にとって気が重いことかもしれません。

しかし、認知症への備えは、

「認知症になることを前提にする」

ことではありません。

これからも本人らしく暮らしていくために、

どこで暮らしたい?

介護が必要になったらどうしたい?

実家はどうしたい?

お金の管理はどうする?

誰に頼りたい?

という希望を確認しておくことです。

そして、エンディングノート、遺言書、任意後見制度など、元気なうちだからこそ検討できる備えもあります。

全部を今日決める必要はありません。

まずは親と、

「これから先も安心して暮らすために、少しずつ整理しておこうか」

と話すところから始めてみましょう。

気になったときが、そなえどき。

これからの暮らしを、ちょっと安心に。

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