
「離れて暮らす親が一人暮らしをしていて心配」
「毎日電話するのは、お互いに負担になりそう」
「もし家の中で倒れてしまったら、誰が気づいてくれるんだろう?」
親が元気に暮らしていても、年齢を重ねるにつれて心配ごとは増えていきます。
転倒や急な体調不良だけではありません。
買い物や食事、薬の管理、特殊詐欺や悪質商法、認知機能の変化など、離れて暮らしているからこそ気づきにくいこともあります。
だからといって、今すぐ同居したり、施設への入居を決めたりする必要があるとは限りません。
大切なのは、「何かあってから考える」のではなく、親が元気なうちに少しずつ備えておくことです。
この記事では、一人暮らしの親が心配になったときに確認したいこと、離れて暮らす家族ができる見守り、緊急時への備え、相談先までわかりやすく解説します。
親の一人暮らし、何が心配?
高齢の親の一人暮らしには、さまざまな心配があります。
| 心配なこと | 具体例 |
|---|---|
| 体調 | 急病・持病の悪化 |
| 事故 | 転倒・転落・入浴中の事故 |
| 食事 | 食事量の低下・栄養の偏り |
| 服薬 | 薬の飲み忘れ・重複 |
| 認知機能 | 物忘れ・判断力の変化 |
| お金 | 支払い忘れ・金銭管理 |
| 防犯 | 特殊詐欺・悪質商法 |
| 孤立 | 人と話す機会の減少 |
| 緊急時 | 発見や連絡が遅れる |
| 将来 | 介護・住まい・身元保証 |
全部を一度に解決する必要はありません。
まずは、今の親の暮らしで何が心配なのかを整理するところから始めましょう。
まず確認したい7つのこと
① 食事はきちんと取れている?
実家へ帰ったときは、冷蔵庫やキッチンの様子をさりげなく確認してみましょう。
以前は自炊していたのにほとんど料理をしなくなった、同じものばかり食べている、食材を何度も買っている、といった変化が見られることもあります。
「ちゃんと食べてる?」
と聞くだけでは、
「食べてるよ」
で終わってしまうことがあります。
一緒に食事をしたり、買い物へ行ったりすると、普段の様子がわかりやすくなります。
② 家の中で危ない場所はない?
高齢になると、自宅の中でも転倒につながる場所が増えてきます。
たとえば、
- 床に物が多い
- 電気コードが通路にある
- 小さな段差がある
- 階段が暗い
- 浴室が滑りやすい
- 手すりがない
- 高い場所に日用品を置いている
といった場所です。
大がかりなリフォームをしなくても、
「よく歩く場所から物をなくす」
「夜間の照明を見直す」
など、小さな改善から始められます。
③ 薬をきちんと飲めている?
薬が増えてくると、
「朝の薬を飲んだかわからない」
「同じ薬をもう一度飲んでしまった」
ということも起こり得ます。
実家へ行ったときに大量の飲み残しがないか確認してみるのも一つの方法です。
本人が管理しづらくなっている場合は、かかりつけの医療機関や薬局などへ相談することも考えましょう。
④ お金の管理で困っていない?
高齢になると、
- 公共料金の支払いを忘れる
- 同じものを何度も購入する
- 通帳や印鑑を頻繁になくす
- 覚えのない契約が増える
- 未開封の請求書がたまる
といった変化が見られる場合があります。
ただし、お金は非常にデリケートな問題です。
いきなり、
「通帳を見せて」
ではなく、
「最近、支払いとか面倒じゃない?」
くらいから話してみるとよいでしょう。
高齢者を狙った詐欺・悪質商法にも注意
一人暮らしの場合、家族が知らないうちに訪問販売などの勧誘を受けていることがあります。
消費者庁も、高齢者等の消費者被害を防ぐには、家族だけでなく地域のさまざまな主体による見守りと周囲の気づきが重要だとしています。
特に、
知らない業者が頻繁に来るようになった
新しい契約書が増えている
見慣れない商品が大量にある
急にお金の話をするようになった
といった変化には注意しましょう。
2025年には、点検を装って不要な契約につなげる「点検商法」の相談が約2万件を超え、高齢者を中心に増加傾向が続いていると消費者庁が説明しています。
「毎日電話する」だけが見守りではない
離れて暮らしていると、
「毎日電話しなきゃ」
と思うかもしれません。
しかし、親にとっても子どもにとっても負担になると長続きしません。
大切なのは、無理なく続けられる仕組みを作ることです。
たとえば、
月・水・金は電話
日曜日はビデオ通話
近くに住む兄弟は月1回訪問
というように家族で分担する方法があります。
毎日連絡する必要があるかどうかも、親の健康状態や生活状況によって違います。
見守りサービスを利用する方法もある
家族だけで見守るのが難しい場合は、民間や自治体などのサービスを利用する方法があります。
代表的なものとして、
センサー型
家の中の動きなどをセンサーで確認します。
緊急通報型
ボタンなどを使って緊急時に通報できる仕組みです。
訪問型
スタッフなどが定期的に訪問して様子を確認します。
電話型
定期的な電話で安否を確認します。
家電・電気などを利用するタイプ
家電等の利用状況から生活の変化を確認するサービスもあります。
サービスによって、
本人が操作する必要があるか
異常時に誰へ連絡されるのか
24時間対応なのか
月額費用はいくらか
などが異なります。
「最新だから」という理由ではなく、親本人が負担なく使えるものを選びましょう。
見守られることを嫌がる親もいる
「監視されているみたいで嫌だ」
と感じる方もいます。
その場合、
「心配だから監視したい」
ではなく、
「何かあったときにすぐ気づけるようにしたい」
と目的を伝えることが大切です。
本人が納得していない状態で見守り機器を設置すると、家族関係が悪くなることもあります。
親のプライバシーも尊重しながら、一緒に方法を決めましょう。
緊急時の連絡先を決めておく
一人暮らしで特に困るのが、
「何かあったとき、誰へ連絡すればいいかわからない」
という状態です。
親が元気なうちに、緊急連絡先を整理しておきましょう。
| 確認しておきたいもの | 例 |
|---|---|
| 家族 | 子ども・兄弟姉妹 |
| 医療 | かかりつけ医 |
| 介護 | ケアマネジャーなど |
| 地域 | 地域包括支援センター |
| その他 | 親しい近所の人など |
スマートフォンだけでなく、紙でもわかりやすい場所に置いておくと安心です。
家族も「親の基本情報」を知っておく
緊急時に初めて、
「かかりつけの病院がわからない」
「何の薬を飲んでいるかわからない」
「保険証がどこにあるかわからない」
となると困ります。
少なくとも、
- かかりつけ医
- 持病
- 服用している薬
- 緊急連絡先
- 健康保険関係
- 介護保険関係
- よく利用するサービス
などは、本人と相談して整理しておくとよいでしょう。
ただし、必要以上の個人情報を家族全員で共有する必要はありません。
合鍵はどうする?
離れて暮らす親が一人暮らしをしている場合、
「合鍵を持っておいた方がいい?」
と考えることもあるでしょう。
緊急時には役立つ可能性がありますが、本人の同意なく持つのは避けましょう。
誰が持つのか
どんなときに使うのか
を親本人と決めておくことが大切です。
地域とのつながりも大切な「見守り」
家族だけですべてを見守る必要はありません。
消費者庁も、高齢者の消費者被害について、地域社会全体で見守り、「気づき → 声かけ → 相談機関等へつなぐ」ことを案内しています。
たとえば、
- 近所の人
- 民生委員
- ケアマネジャー
- ヘルパー
- 地域包括支援センター
- 自治体の見守り事業
など、地域にもさまざまなつながりがあります。
親が元気なうちから地域との接点を持っておくことも、将来への備えになります。
地域包括支援センターって何?
親の暮らしについて、
「まだ介護というほどではないけれど心配」
というときに知っておきたいのが地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは市町村が設置し、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防、地域の支援体制づくりなどを行う機関です。
つまり、
「要介護になってから行く場所」だけではありません。
「最近、親の物忘れが気になる」
「一人暮らしを続けられるか心配」
「どんな支援があるかわからない」
といった段階でも、地域の相談窓口を確認しておくとよいでしょう。
「最近ちょっと変わった?」を見逃さない
離れて暮らしていると、毎日の小さな変化には気づきにくいものです。
帰省したときには、家の状態も見てみましょう。
こんな変化がないかチェック
- 冷蔵庫に同じ食品が大量にある
- 賞味期限切れの食品が増えた
- 部屋が以前より散らかっている
- 郵便物がたまっている
- 薬が大量に残っている
- 同じ話を何度もする
- 支払い忘れが増えた
- 身なりに無頓着になった
- 外出することが減った
- 怪しい契約書や商品がある
ひとつ当てはまったからといって、すぐに認知症などと決めつけることはできません。
大切なのは、以前と比べて変化しているかを見ることです。
認知症が心配になったら
物忘れなどが気になるようになった場合、
「認知症になったら考えよう」
ではなく、早めに相談することも大切です。
特に将来、
お金の管理
不動産
介護
契約
相続
などについて本人の希望を聞いておきたい場合は、元気なうちから家族で話しておく意味があります。
→ 関連記事:親の終活、どう切り出す?嫌がられにくい話し方とタイミング
一人暮らしが難しくなったらどうする?
見守りを続けていても、いつか一人暮らしを続けることが難しくなる場合があります。
そのときの選択肢は、
子どもとの同居だけではありません。
たとえば、
- 在宅介護サービスを利用する
- 見守りサービスを増やす
- 高齢者向け住宅へ住み替える
- 老人ホーム等への入居を検討する
- 家族の近くへ転居する
などがあります。
大切なのは、
「危なくなったら施設」
と決めてしまわないことです。
本人がどんな暮らしを望んでいるのかを聞きながら考えましょう。
身元保証人についても早めに確認
将来、老人ホームや高齢者向け住宅などへの入居を検討するとき、身元保証人などを求められる場合があります。
子どもや親族へ頼めるとは限りません。
「まだ元気だから関係ない」と考えず、
もし施設へ入ることになったら誰へ相談するか
くらいは考えておくと安心です。
→ 関連記事:高齢者の身元保証人とは?
→ 関連記事:身元保証サービスとは?
親の一人暮らしチェックリスト
離れて暮らす親について、一度確認してみましょう。
| 確認すること | |
|---|---|
| □ | 定期的に連絡を取れている |
| □ | 食事が取れている |
| □ | 薬を管理できている |
| □ | 家の中に危険な場所がない |
| □ | 支払い・お金を管理できている |
| □ | 怪しい契約が増えていない |
| □ | 近所や地域とのつながりがある |
| □ | かかりつけ医を家族が把握している |
| □ | 緊急連絡先を決めている |
| □ | 必要なら見守りサービスを検討している |
| □ | 地域包括支援センターを確認している |
| □ | 将来どこで暮らしたいか話したことがある |
全部できていなくても大丈夫です。
まずは「今、一番心配なことは何か」から確認していきましょう。
親の一人暮らしについてよくある質問
Q.一人暮らしの親には毎日連絡した方がいい?
必ず毎日である必要はありません。健康状態や本人の希望、家族との距離などによって適切な頻度は異なります。無理なく続けられる方法を親と一緒に決めることが大切です。
Q.親が見守りサービスを嫌がります
「監視するため」ではなく、「何かあったときに早く気づくため」と目的を話してみましょう。センサー型、電話型、訪問型など方法もさまざまなので、本人が受け入れやすいものを選ぶことが重要です。
Q.親の物忘れが増えて心配です
自己判断で認知症と決めつけず、気になる変化が続く場合は医療機関や地域包括支援センターなどへの相談を検討しましょう。地域包括支援センターでは高齢者に関する総合相談などを行っています。
Q.親が詐欺に遭わないか心配です
本人への注意喚起だけでなく、家族や地域による見守りも重要です。消費者庁も、高齢者等の消費者被害の早期発見には周囲の気づきが重要だとしています。
Q.親が「まだ一人で大丈夫」と言っています
本人が安全に生活できているのであれば、一人暮らしをやめさせることだけが答えではありません。「一人暮らしを続けるために何を準備すればいいか」という視点で話してみるとよいでしょう。
まとめ|「一人暮らしをやめさせる」より「続けられる備え」を
親が一人暮らしをしていると、
「もし倒れたら?」
「認知症になったら?」
「詐欺に遭ったら?」
と心配になるものです。
しかし、心配だからといって、すぐに同居や施設入居を決める必要があるとは限りません。
まずは、
定期的に連絡する
生活の変化に気づく
家の中を安全にする
緊急時の連絡先を決める
家族以外の見守りもつくる
将来の暮らしについて話しておく
ことから始めてみましょう。
特に大切なのは、家族だけで抱え込まないことです。
地域包括支援センターなど、高齢者の暮らしについて相談できる地域の窓口もあります。
親が元気な今だからこそ、
「これからも一人で安心して暮らすために、何を準備しておこうか?」
という話ができます。
一人暮らしをやめるための準備ではなく、親が望む暮らしをできるだけ長く続けるための備えとして考えてみましょう。
気になったときが、そなえどき。
これからの暮らしを、ちょっと安心に。