
「親に介護が必要かもしれない。でも、何から始めればいいの?」
親が転倒した、入院した、物忘れが増えた、一人暮らしが難しくなってきた――。
介護は、ある日突然始まることがあります。
いざ自分の親のこととなると、
「まずどこに相談すればいい?」
「介護保険ってどうやって使うの?」
「仕事を続けながら介護できる?」
「老人ホームを探した方がいい?」
と、分からないことばかりではないでしょうか。
大切なのは、家族だけですべてを抱え込もうとせず、順番に専門家や制度につなげていくことです。
この記事では、初めて親の介護に向き合う方に向けて、介護が必要になったときにやることを順番に解説します。
親の介護が必要になったら、まず何をすればいい?
最初に覚えておきたいのは、いきなり老人ホームを探したり、家族だけで介護方法を決めたりする必要はないということです。
大まかな流れは次のようになります。
親の状態を確認する
↓
地域包括支援センターなどに相談する
↓
要介護認定を申請する
↓
認定結果を確認する
↓
ケアマネジャーなどと相談する
↓
必要な介護サービスを利用する
↓
必要に応じて施設入居も検討する
一つずつ見ていきましょう。
① まずは親の現在の状態を確認する
最初に確認したいのが、「親が今、何に困っているのか」です。
たとえば、
- 一人で食事を作れなくなった
- 薬を飲み忘れるようになった
- お風呂に一人で入るのが難しい
- 階段の上り下りが危なくなった
- 転倒することが増えた
- 同じ話を何度もする
- お金の管理が難しくなった
- ゴミ出しや掃除ができなくなった
- 病院への通院が難しくなった
などがあります。
「介護が必要かどうか」を家族だけで判断する必要はありません。
まずは、以前はできていたのに、できなくなったことを書き出してみると状況を整理しやすくなります。
② 地域包括支援センターに相談する
「何から始めればいいか分からない」という段階なら、まず相談したいのが地域包括支援センターです。
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしや介護について相談できる地域の窓口です。
介護だけではなく、医療・福祉・認知症・権利擁護など、高齢者の生活に関するさまざまな相談に対応しています。
基本的に相談は無料です。
親が住んでいる地域を担当する地域包括支援センターへ、
「最近、母が一人で生活するのが難しくなってきました」
「父が退院するのですが、自宅で生活できるか心配です」
といった形で相談して大丈夫です。
親と離れて暮らしている場合は?
自分の住んでいる地域ではなく、親が住んでいる地域を担当する地域包括支援センターへ相談するのが基本です。
遠方に住んでいる場合も、まず電話で相談してみましょう。
③ 介護保険の「要介護認定」を申請する
介護保険のサービスを利用するためには、原則として要介護認定(要支援認定を含む)を受けます。
申請窓口は、市区町村の介護保険担当窓口です。
本人や家族が申請するほか、地域包括支援センターなどに相談しながら進めることもできます。
要介護認定とは?
「どの程度の介護が必要なのか」を判定する制度です。
認定結果は、
要支援1・2
または、
要介護1〜5
などに分かれます。
数字が大きくなるほど、必要とされる介護の程度も大きくなります。
④ 認定調査を受ける
申請すると、認定調査員による聞き取りなどが行われます。
ここで注意したいのが、親本人が普段より「できる」と答えてしまうことがあることです。
「家族に迷惑をかけたくない」
「まだ自分は大丈夫」
という気持ちから、実際の生活状況より元気に答えてしまうことがあります。
可能であれば家族も状況を把握しておき、
- 最近転倒した
- 食事を忘れる
- 夜中に外へ出ようとする
- 薬の管理ができていない
- 一人で入浴するのが危ない
など、普段の生活で実際に困っていることを具体的に伝えることが大切です。
⑤ ケアマネジャーなどと介護サービスを考える
認定結果などに応じて、必要なサービスを検討していきます。
要介護認定を受けた場合には、一般的にケアマネジャー(介護支援専門員)が本人や家族の希望を聞きながらケアプラン作成などを支援します。
介護サービスにはさまざまな種類があります。
訪問介護
ホームヘルパーが自宅を訪問し、必要な介護や生活援助を行います。
デイサービス
日帰りで施設へ通い、食事・入浴・機能訓練などのサービスを受けます。
訪問看護
看護師などが自宅を訪問し、主治医の指示などに基づいて療養生活を支援します。
ショートステイ
短期間、施設に宿泊して介護を受けるサービスです。
家族の休息や事情によって一時的に在宅介護が難しい場合などにも利用されます。
「介護が始まった=家族が24時間面倒を見る」
というわけではありません。
利用できる制度やサービスを組み合わせることが重要です。
⑥ 自宅で暮らし続けられるかを考える
親が「できれば自宅で暮らしたい」と希望することも多いでしょう。
その場合は、
- 手すりを付ける
- 段差を減らす
- ベッドを変更する
- 福祉用具を利用する
- 訪問介護を利用する
- デイサービスを利用する
- 配食サービスを利用する
などによって、自宅での生活を続けられる可能性があります。
ただし、本人の希望だけでなく安全に生活できるかどうかも重要です。
ケアマネジャーなど専門職と相談しながら判断しましょう。
⑦ 老人ホームへの入居も選択肢に入れる
在宅介護が難しくなってきた場合には、施設への入居も選択肢になります。
代表的な施設には、
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
などがあります。
施設によって、
入居条件・受けられるサービス・費用・医療対応などが異なります。
「老人ホームならどこでも同じ」ではありません。
親の身体状況、必要な介護、予算などを整理して比較することが大切です。
親の介護が始まる前に確認しておきたい「お金」
介護では、身体の問題と同じくらい重要なのがお金です。
できれば親が元気なうちに、
- 年金はいくら受け取っているか
- 預貯金はどのくらいあるか
- 生命保険に加入しているか
- 不動産を所有しているか
- 毎月の生活費はいくらか
- 介護費用として使えるお金はいくらか
などを確認しておきたいところです。
介護費用をすべて子どもの収入から出す前提にしてしまうと、介護する側の生活にも大きな負担がかかります。
まずは親自身の収入・資産と利用できる制度を把握することから始めましょう。
親が元気なうちに聞いておきたいこと
介護が必要になってからでは、本人の希望を確認することが難しくなる場合があります。
元気なうちに、
「もし一人暮らしが難しくなったらどうしたい?」
「できるだけ自宅で暮らしたい?」
「施設に入ることについてどう思っている?」
と少しずつ話しておくことも大切です。
介護だけでなく、
財産管理・相続・葬儀・お墓・実家をどうするか
といった問題にもつながっていきます。
一度ですべて決める必要はありません。
日常会話の延長として、少しずつ本人の希望を聞いておきましょう。
仕事を辞める決断は急がない
突然親の介護が始まると、
「仕事を辞めて自分が介護するしかない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、退職すると収入だけでなく、その後の生活設計にも大きな影響があります。
介護休業制度など、仕事と介護を両立するための制度もあります。
まずは勤務先の制度を確認するとともに、地域包括支援センターやケアマネジャーなどにも相談し、利用できる介護サービスを検討してから判断することが大切です。
兄弟姉妹がいるなら早めに話し合う
介護では、
「近くに住んでいるから」
「長女だから」
「仕事の融通が利くから」
といった理由で、一人に負担が集中してしまうことがあります。
兄弟姉妹がいる場合は、
- 通院の付き添い
- 買い物
- 手続き
- 親との連絡
- 介護サービスとの連絡
- 費用負担
など、役割を分けられないか話し合ってみましょう。
全員が同じ量の介護をする必要はありません。
できることを分担するという考え方も大切です。
親の介護で「今すぐ全部決める」必要はありません
親の介護が必要になると、
「老人ホームを決めなきゃ」
「実家はどうする?」
「お金は足りる?」
「仕事はどうする?」
と、いくつもの問題が一度に押し寄せてきたように感じます。
でも、最初から全部決める必要はありません。
まずは、
①親の状態を確認する
②地域包括支援センターなどに相談する
③要介護認定について相談・申請する
ここから始めてみましょう。
専門家や介護サービスにつながることで、家族だけでは見えなかった選択肢が見つかることもあります。
親の介護は、家族だけで背負うものではありません。
利用できる制度や周囲の力を借りながら、親にとっても家族にとっても無理の少ない方法を探していきましょう。