
「親の一人暮らしがそろそろ心配」
「老人ホームを考えた方がいいのかな?」
「でも、何から始めればいいのかわからない」
親の年齢が上がってくると、老人ホームへの入居を考えるタイミングがやってきます。
しかし、いざ探し始めると「介護付き」「住宅型」「特養」「サ高住」などさまざまな言葉が出てきて、違いがわからない方も多いのではないでしょうか。
老人ホーム選びで大切なのは、いきなり施設を探し始めないことです。
まずは、
本人がどんな生活を望んでいるのか
どのくらい介護が必要なのか
毎月いくらまでなら支払えるのか
を整理することから始めましょう。
この記事では、老人ホームを考え始めたときに何からすればいいのか、施設の種類や費用、見学時のポイント、入居までの流れをわかりやすく解説します。
老人ホームを考えるのはいつから?
「一人暮らしができなくなったら老人ホーム」
と考える方もいるかもしれません。
しかし、完全に一人暮らしが難しくなってから慌てて探すより、少し心配を感じ始めた段階から情報を集めておく方が選択肢を広げやすくなります。
たとえば、
- 転倒が増えてきた
- 食事の準備が難しくなった
- 薬の管理ができなくなってきた
- 物忘れが増えてきた
- 夜間の一人暮らしが心配
- 家事が負担になってきた
- 入院後、自宅へ戻るのが難しそう
- 家族だけで介護するのが難しくなった
といった変化が、考え始めるきっかけになります。
→ 関連記事:親の一人暮らしが心配|離れて暮らす家族ができる見守りと備え
老人ホームを探す前に確認する5つのこと
施設のパンフレットを集める前に、まず次の5つを整理してみましょう。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 本人の希望 | どこで・どんな生活をしたいか |
| 介護状態 | 自立・要支援・要介護など |
| 医療 | 持病・服薬・医療的ケア |
| 場所 | 自宅近く・子どもの近くなど |
| お金 | 初期費用・毎月支払える金額 |
特に大切なのが、本人の希望と予算です。
家族にとって便利な施設が、本人にとって暮らしやすい施設とは限りません。
老人ホームにはどんな種類がある?
「老人ホーム」とひとまとめに呼ばれますが、高齢者向けの施設や住まいにはいくつもの種類があります。
代表的なものを見てみましょう。
① 介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、施設から介護保険サービスの提供を受けながら生活するタイプの有料老人ホームです。
食事や生活支援と介護を一体的に受けやすいことが特徴です。厚生労働省の資料でも、有料老人ホームには、事業者が介護保険サービスを提供することを前提とした「介護付」と、外部サービスを利用する「住宅型」があると整理されています。
施設によって、入居できる要介護度や医療対応などは異なります。
② 住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームでは、食事や生活支援などを受けながら生活します。
介護が必要になった場合は、必要に応じて訪問介護などの外部の介護サービス事業者と契約して利用するのが基本です。
「住宅型」と書いてあってもサービス内容は施設によって違うため、月額料金だけで判断しないことが大切です。
③ サービス付き高齢者向け住宅
「サ高住」と呼ばれることもあります。
高齢者が暮らしやすいよう配慮された住宅で、安否確認と生活相談のサービスが提供されます。食事などを提供する住宅もあります。
注意したいのは、
サ高住=介護付き老人ホーム
ではないということです。
介護が必要な場合に、どのようなサービスを利用できるのか確認しましょう。
④ 特別養護老人ホーム
「特養」と呼ばれる公的な介護施設です。
常時介護が必要な方の生活を支える施設で、入所には要件があります。
有料老人ホームなどと比べて費用負担を抑えられる場合がありますが、地域や施設によっては入所まで時間がかかることもあります。
⑤ 認知症グループホーム
認知症の方が、少人数の環境で共同生活をする施設です。
認知症の診断や要支援・要介護状態、地域など、入居には条件があります。
認知症があるからどこのグループホームでも入居できる、というわけではありません。
どの老人ホームを選べばいい?
「結局、どれが一番いいの?」
と思うかもしれません。
しかし、すべての人にとって一番よい施設はありません。
たとえば、
比較的元気で自由な生活を続けたい
という方と、
日常生活の多くに介護が必要
という方では、適した住まいが違います。
さらに、
認知症への対応
医療的ケア
看取り
などによっても候補は変わります。
そのため、
施設の種類を決める → 探す
ではなく、
本人の状態・希望・予算を整理する → 条件に合う施設を探す
という順番で考えましょう。
老人ホームの費用はどのくらい?
老人ホームの費用は、施設によって大きく異なります。
一般的には、
入居するときに必要なお金
- 入居一時金
- 敷金など
毎月必要なお金
- 家賃・居住費
- 管理費
- 食費
- 介護サービス費
- 水道光熱費
- 医療費
- 日用品
- その他サービス費
などがあります。
注意したいのは、広告などに掲載されている「月額○万円」だけで判断しないことです。
「月額料金」に含まれない費用を確認する
たとえば、
月額15万円
と書かれていても、それだけで毎月の支払いが終わるとは限りません。
介護サービスの自己負担、医療費、薬代、理美容、日用品、おむつ代などが別途必要になる場合があります。
見学や問い合わせの際には、
「結局、毎月全部でいくらくらい必要になりますか?」
と確認しましょう。
現在の状態だけでなく、
介護度が上がった場合にいくらになるのか
まで聞いておくと安心です。
老人ホームのお金は「何年払えるか」で考える
施設選びでは、
「月20万円なら払えそう」
だけで判断しないことも重要です。
たとえば、
年金はいくらあるのか
預貯金はいくらあるのか
毎月いくら不足するのか
を整理します。
仮に、
毎月の施設費用 20万円
年金収入 15万円
なら、単純計算では毎月5万円を預貯金などから補うことになります。
1年間なら60万円。
10年間なら600万円です。
実際には医療費なども変化するため、入居時だけではなく長期的に支払えるかを考えることが大切です。
実家をどうするかも考えておく
親が老人ホームへ入居すると、実家が空き家になる場合があります。
ここも後回しにしがちな問題です。
- そのまま残す
- 子どもが住む
- 売却する
- 賃貸に出す
- 家財を整理する
などの選択肢があります。
特に長期間空き家になる可能性があるなら、施設入居とあわせて考えておきましょう。
→ 関連記事:実家じまいとは?いつから始める?
老人ホーム探しは誰に相談する?
自分たちだけで施設を探すのが難しい場合には、相談できる場所があります。
親が住んでいる地域の地域包括支援センターや、担当のケアマネジャーがいる場合にはケアマネジャーなどへ相談できます。
また、全国の介護サービス事業所については、厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも検索・比較できます。サービス内容などの詳細情報をインターネットで閲覧できる公的な仕組みです。
民間の老人ホーム紹介サービスを利用する方法もありますが、紹介の仕組みや提携施設などを確認したうえで利用しましょう。
老人ホームは必ず見学する
候補が見つかったら、できるだけ実際に見学しましょう。
ホームページやパンフレットだけではわからないことがたくさんあります。
特に見てほしいのは、建物の豪華さより「そこで暮らしている人の様子」です。
見学するときのチェックポイント
① スタッフの様子
入居者への声のかけ方やスタッフ同士の雰囲気を見てみましょう。
② 入居者の様子
共有スペースでどのように過ごしているか確認します。
③ 部屋
広さだけでなく、トイレや収納、ベッド周辺の動線も確認しましょう。
④ 食事
献立だけでなく、食事形態の変更やアレルギーへの対応なども確認します。
⑤ 医療体制
夜間の急変時、協力医療機関、看護職員の配置などを確認しましょう。
⑥ 認知症への対応
認知症が進行した場合でも住み続けられるか確認します。
⑦ 看取り
終末期まで生活できるのか、どのような対応になるのかも重要です。
⑧ 面会・外出
家族との面会、外出、外泊などのルールも確認しておきましょう。
「今は元気」だけで選ばない
老人ホームは長く暮らす場所になる可能性があります。
入居時には歩けていても、数年後には介護が必要になるかもしれません。
そのため、
介護度が上がっても住める?
認知症が進んだら?
入院したら?
医療的なケアが必要になったら?
看取りはできる?
といったことも確認しておきましょう。
重要事項説明書を確認する
入居を検討するときには、料金やサービス、契約条件などをしっかり確認します。
特に、
- 入居一時金
- 月額費用
- 追加費用
- 介護サービス
- 医療対応
- 退去条件
- 入院時の扱い
- 返還金
- 看取り
などは重要です。
わからない言葉があれば、そのまま契約せず質問しましょう。
「人気なので今日決めてください」
などと急かされても、大きな契約なので家族で内容を確認してから判断することが大切です。
老人ホーム入居までの基本的な流れ
おおまかには次のように進みます。
| STEP | やること |
|---|---|
| 1 | 本人の希望を聞く |
| 2 | 介護・医療状態を確認 |
| 3 | 予算を決める |
| 4 | 希望地域を決める |
| 5 | 施設を探す |
| 6 | 資料請求・問い合わせ |
| 7 | 複数施設を見学 |
| 8 | 費用・契約内容を比較 |
| 9 | 入居申し込み・審査 |
| 10 | 契約・入居準備 |
| 11 | 入居 |
施設によって手続きは異なります。
「来月までに入居しないといけない」という状況になる前に探し始めると、比較する時間を取りやすくなります。
身元保証人を求められたら?
施設への入居時に、身元保証人や身元引受人などについて確認される場合があります。
身寄りがない方や、親族へ頼むことが難しい方にとっては大きな問題です。
ただし、求められる役割は施設や契約によって異なります。
たとえば、
緊急時の連絡
入院時の対応
支払いに関すること
亡くなった後の対応
などが関係する場合があります。
「保証人がいない=老人ホームへ絶対に入れない」と決めつけず、まず施設へ相談しましょう。
→ 関連記事:高齢者の身元保証人とは?
→ 関連記事:身元保証サービスとは?
親が老人ホームを嫌がる場合は?
家族が、
「もう危ないから施設に入って」
と言っても、本人が嫌がることがあります。
住み慣れた家を離れるのですから、当然不安もあります。
いきなり、
「老人ホームに入る?」
ではなく、
「これからどんな暮らしをしたい?」
から話してみましょう。
そして可能であれば、本人も一緒に見学します。
施設を「介護される場所」ではなく、これから暮らす新しい家として考えることが大切です。
老人ホーム選びチェックリスト
| 確認すること | |
|---|---|
| □ | 本人の希望を聞いた |
| □ | 要介護度を確認した |
| □ | 持病・服薬を整理した |
| □ | 毎月の予算を決めた |
| □ | 年金額を確認した |
| □ | 希望する地域を決めた |
| □ | 複数の施設を比較した |
| □ | 実際に見学した |
| □ | 追加費用を確認した |
| □ | 医療・認知症対応を確認した |
| □ | 看取りについて確認した |
| □ | 退去条件を確認した |
| □ | 身元保証について確認した |
| □ | 実家をどうするか考えた |
老人ホームについてよくある質問
Q.老人ホームは元気なうちから探してもいい?
もちろんです。施設によって入居条件は異なりますが、情報収集自体は早めに始められます。急いで決めなければならなくなる前に、本人の希望や予算を整理しておくとよいでしょう。
Q.特養と有料老人ホームは同じ?
異なります。特別養護老人ホームは介護保険施設の一つで、有料老人ホームは老人福祉法に定められた高齢者向けの施設です。有料老人ホームにも介護付きや住宅型などがあります。
Q.サ高住は老人ホームですか?
サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者向けの「住宅」として登録される仕組みです。一方、提供するサービスの内容によっては有料老人ホームにも該当する場合があります。施設名だけで判断せず、介護サービスの提供方法を確認しましょう。
Q.老人ホームは何か所くらい見学すればいい?
決まりはありませんが、可能であれば複数の施設を比較することをおすすめします。1施設だけでは料金やサービス、雰囲気の違いを判断しにくいためです。
Q.親のお金だけで足りない場合は?
まず年金、預貯金、毎月の施設費用などを整理しましょう。施設の種類によって費用負担も異なります。家族が援助する場合も「毎月いくらを何年間支援できるのか」まで考えることが重要です。
まとめ|老人ホーム選びは「施設探し」の前が大切
老人ホームを考え始めたら、すぐに施設を検索する必要はありません。
まずは、
本人はどんな暮らしをしたいのか
どのくらい介護が必要なのか
医療面で必要なことは何か
どの地域で暮らしたいのか
毎月いくらまで支払えるのか
を整理しましょう。
そのうえで複数の施設を比較し、実際に見学します。
そして、建物の新しさや豪華さだけでなく、
「ここで親が毎日暮らしている姿を想像できるか」
という視点で見てみてください。
また、老人ホームへの入居は本人だけの問題ではありません。
身元保証、実家の管理、家財整理、将来の相続など、家族で考えておきたいことも出てきます。
元気なうちに少しずつ話しておけば、選択肢を持った状態で将来を考えられます。
気になったときが、そなえどき。
これからの暮らしを、ちょっと安心に。