
「親が施設に入り、実家に誰も住まなくなった」
「親が亡くなって実家を相続したけれど、どうすればいいかわからない」
「すぐに売るつもりはないけれど、このまま空き家にしておいて大丈夫?」
実家が空き家になる理由はさまざまです。
親の施設入居や入院、相続、子どもとの同居などをきっかけに、それまで家族が暮らしていた家が突然「誰も住まない家」になることがあります。
思い出の詰まった実家だからこそ、
「今すぐ売るのはちょっと……」
と決断できない方も多いでしょう。
しかし、空き家は誰も住んでいなくても管理が必要です。
放置すると建物の劣化だけでなく、害虫、防犯、近隣への影響など、さまざまな問題につながる可能性があります。国土交通省も、空き家の放置によって倒壊、ねずみや害虫、不法侵入などの問題が生じると注意を呼びかけています。
大切なのは、慌てて売ることではありません。
まず、
「残す」「売る」「貸す」「活用する」「解体する」
という選択肢を知り、家族で今後について考えることです。
この記事では、実家が空き家になったときにまず確認したいこと、放置するリスク、管理方法、売却や活用などの選択肢をわかりやすく解説します。
実家が空き家になったら、まず何をする?
「とりあえずそのままにしておこう」
となりやすいのですが、最初に次のことを確認しておきましょう。
| 確認すること | 内容 |
|---|---|
| 所有者 | 現在誰の名義になっているか |
| 相続 | 相続手続きは終わっているか |
| 建物 | 雨漏り・破損などがないか |
| ライフライン | 電気・ガス・水道の状態 |
| 郵便物 | 郵便物がたまっていないか |
| 家財 | 貴重品・重要書類が残っていないか |
| 庭 | 草木が伸びていないか |
| 防犯 | 戸締まり・侵入の形跡 |
| 保険 | 火災保険などの契約状況 |
| 今後 | 残す・売る・貸すなど |
特に相続によって空き家になった場合は、「誰が所有している家なのか」を曖昧にしないことが重要です。
空き家は「何もしなくても維持できる」わけではない
人が住まなくなった家は、想像以上に変化します。
窓を開けなくなれば湿気がこもりやすくなり、水道を使わなくなれば排水口などの状態も変わります。
庭木や雑草も伸びます。
さらに、
台風で屋根が壊れた
大雨で雨漏りした
郵便物が大量にたまった
といったことが起きても、誰も住んでいなければ発見が遅れてしまいます。
そのため、今後どうするか決まっていなくても、定期的な管理は必要です。
空き家を放置するとどうなる?
① 建物が傷んでいく
家は誰も住んでいなくても劣化します。
雨漏りや湿気などを放置すれば、建物の状態が悪化する可能性があります。
小さな破損だったものが、発見が遅れたことで大きな修繕につながることもあります。
② 庭木や雑草が伸びる
実家の庭も忘れてはいけません。
雑草が生い茂ったり、木の枝が道路や隣の敷地へ伸びたりすると、近隣へ迷惑をかける可能性があります。
国土交通省も、空き家管理上の問題として、敷地外へ伸びた枝などが周囲の建物や歩行者に影響するケースを挙げています。
③ 防犯上の問題が起こる
郵便物がたまっている。
庭が荒れている。
夜になっても明かりがつかない。
このような状態が続けば、外から見ても「誰も住んでいない家」だとわかりやすくなります。
不法侵入などのリスクも考えて、郵便物や戸締まりなどを定期的に確認しましょう。
④ 害虫・害獣などの問題
人が住まなくなると、ねずみや害虫などの問題が発生する場合があります。
自宅だけで完結せず、周辺へ影響する可能性があるのも空き家問題の難しいところです。
⑤ 近隣トラブルにつながる
庭木だけでなく、
- 塀が傾いている
- 屋根材が落ちそう
- ゴミが放置されている
- 害虫が発生している
などの状態になれば、近隣住民にも影響します。
「自分たちの家だからそのままでいい」
ではなく、所有している以上、適切に管理する必要があります。
「管理不全空家」って何?
空き家について知っておきたい言葉が、管理不全空家です。
2023年に改正された空家法では、そのまま放置すれば「特定空家」になるおそれがある状態の空き家について、市区町村が管理不全空家として指導・勧告できる仕組みが導入されました。
つまり、
「倒壊寸前になるまでは関係ない」
というわけではありません。
問題が深刻になる前の段階から、適切な管理を求められる場合があります。
空き家だと固定資産税が6倍になる?
よく、
「空き家にすると固定資産税が6倍になる」
と言われることがあります。
これは少し注意が必要な表現です。
住宅が建っている土地には「住宅用地特例」があり、小規模住宅用地では固定資産税の課税標準が6分の1になる仕組みがあります。
ただし、管理不全空家や特定空家として市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
その結果として税負担が大きくなる可能性があるため、
「空き家になった瞬間、一律で固定資産税が6倍になる」
という意味ではありません。
ここは誤解しないようにしましょう。
実家が空き家になったときの5つの選択肢
では、空き家になった実家はどうすればよいのでしょうか。
大きく分けると、次の5つがあります。
① そのまま所有する
すぐに結論を出せない場合は、しばらく所有しておく方法があります。
たとえば、
「将来自分たちが住むかもしれない」
「家族でまだ話し合えていない」
という場合です。
ただし、所有している間は、
固定資産税
保険
修繕
庭の手入れ
定期的な見回り
などの負担が続きます。
「何となく残す」のではなく、いつまで保有するかを決めておくとよいでしょう。
② 売却する
今後家族が住む予定がないのであれば、売却も選択肢になります。
売却すれば、空き家を長期間管理する負担をなくすことができます。
ただし、
家財が大量に残っている
相続登記が終わっていない
建物が古い
土地の境界がわからない
など、売却前に整理しなければならない問題が出てくる場合があります。
そのため、
「まず全部片付けてから不動産会社へ行こう」
と決めつけず、現状のまま一度相談する方法もあります。
→ 関連記事:実家の片付けは何から始める?捨ててはいけないものリストと進め方
③ 賃貸として貸す
立地や建物の状態によっては、賃貸住宅として活用する方法もあります。
家賃収入が得られる可能性がある一方、
- 修繕
- 入居者募集
- 契約
- 設備トラブル
- 管理
- 税金
なども考える必要があります。
「売るのはもったいないから、とりあえず貸そう」
ではなく、修繕費や将来の売却まで含めて検討しましょう。
④ 家族で活用する
子どもや孫が住む、セカンドハウスとして利用するなどの方法もあります。
ただし、
「いつか誰かが住むかもしれない」
という状態のまま何年も経過するケースには注意が必要です。
本当に使う予定があるのか、いつから誰が使うのかまで家族で話してみましょう。
⑤ 解体する
建物がかなり老朽化している場合には、解体して土地として活用・売却する選択肢もあります。
ただし、
解体すれば必ず売りやすくなる
とは限りません。
解体費用がかかるほか、土地や建物の状況によって判断も変わります。
売却を考えているなら、解体する前に不動産会社などへ相談し、
建物付きで売る場合
解体して土地として売る場合
を比較してみるとよいでしょう。
「売る・貸す・残す」で迷ったら
次のように考えてみましょう。
| 質問 | YESなら |
|---|---|
| 将来、家族が住む予定がある? | 残す・活用を検討 |
| 定期的に管理できる? | 保有も選択肢 |
| 賃貸需要がありそう? | 貸すことを検討 |
| 今後誰も住む予定がない? | 売却を検討 |
| 建物の老朽化が進んでいる? | 売却・解体を検討 |
| 維持費が負担になっている? | 早めに処分を検討 |
答えは家庭によって違います。
「実家だから残さなければならない」
という決まりもありません。
相続した実家なら「相続登記」を確認
親が亡くなって実家を相続した場合には、登記名義も確認しましょう。
2024年4月1日から相続登記は義務化されています。
不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが原則として必要です。正当な理由なく義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
さらに重要なのが、義務化以前の相続です。
2024年4月1日より前に相続した不動産でも、相続登記が済んでいなければ義務化の対象になります。
該当する場合、原則として2027年3月31日までの登記が必要になるケースがあります。
「昔亡くなった祖父の名義のまま」
という実家がある場合も、一度確認してみましょう。
売却するなら相続登記が必要
「相続人申告登記をしておけば、そのまま家を売れる?」
と思う方もいるかもしれません。
相続人申告登記は、相続登記の申請義務を簡易に履行するための制度ですが、不動産の権利関係を公示するものではありません。
そのため、相続した不動産を売却する場合には、別途相続登記が必要です。
実家の売却を考えているなら、早めに登記の状況を確認しておきましょう。
相続した空き家を売ると税金はどうなる?
不動産を売却して利益が出れば、譲渡所得に対する税金が発生する場合があります。
一方、相続した空き家については、一定の要件を満たす場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。
ただし、
相続した家なら誰でも3,000万円控除される
わけではありません。
家屋の要件、相続から売却までの期間、売却方法など細かな条件があります。
現在の制度では、一定の要件のもと、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡などが対象となります。また、この特例措置は2027年12月31日まで延長されています。
売却を考えている場合には、税理士や税務署などへ早めに確認するとよいでしょう。
親が老人ホームへ入った場合は?
親が亡くなった場合だけでなく、
老人ホームへの入居によって実家が空き家になる
ケースもあります。
この場合に注意したいのが、家の所有者は親のままという点です。
子どもが管理しているからといって、親名義の実家を子どもの判断だけで自由に売却できるとは限りません。
特に親の判断能力が低下してから売却が必要になると、手続きが複雑になる可能性があります。
だからこそ、親が元気なうちに、
施設へ入ったら実家をどうする?
と話しておくことが大切です。
→ 関連記事:老人ホームの入居は何から始める?
→ 関連記事:親が認知症になる前にやっておきたいこと
遠方で管理できない場合は?
「実家まで車で3時間かかる」
「県外に住んでいる」
という方もいるでしょう。
その場合、家族だけで管理し続ける必要はありません。
民間の空き家管理サービスなどを利用する方法もあります。
サービスによって異なりますが、
- 外観確認
- 郵便物確認
- 室内換気
- 通水
- 庭の確認
- 写真による報告
などを依頼できる場合があります。
自治体によっては空き家に関する相談窓口や制度を設けていることもあるため、実家がある市区町村にも確認してみましょう。
空き家を管理するときのチェックリスト
定期的に次のような場所を確認しましょう。
| 確認すること | |
|---|---|
| □ | 郵便物がたまっていない |
| □ | 窓・玄関が破損していない |
| □ | 雨漏りがない |
| □ | カビ・湿気がひどくない |
| □ | 庭木が敷地外へ出ていない |
| □ | 雑草が伸びすぎていない |
| □ | 害虫・害獣の形跡がない |
| □ | 屋根・外壁に異常がない |
| □ | 塀・フェンスが傾いていない |
| □ | 不法侵入の形跡がない |
| □ | 水回りに異常がない |
| □ | 近隣へ迷惑をかけていない |
台風や大雨、地震などの後には、できるだけ早めに状態を確認すると安心です。
実家の荷物は全部捨てていい?
空き家になったからといって、すぐに家財をすべて処分するのはおすすめできません。
特に相続が関係している場合、
遺言書
権利証・登記関係書類
通帳
印鑑
保険証券
年金関係書類
貴金属
有価証券
などの重要なものが残っている可能性があります。
また、遺品は相続財産に関係する場合があります。
相続人が複数いるなら、独断で処分せず、家族で確認しながら進めましょう。
→ 関連記事:実家の片付けは何から始める?捨ててはいけないものリストと進め方
「いつか考える」が一番長引きやすい
空き家問題で難しいのは、
「今すぐ困っていない」
ことです。
雨漏りしていない。
近所から苦情もない。
固定資産税も払えている。
すると、
「今年はこのままでいいか」
となり、その状態が何年も続くことがあります。
しかし、その間にも建物は古くなり、所有者自身も年齢を重ねます。
さらに相続が重なると、関係する人が増えて処分が難しくなる場合もあります。
すぐに売る必要はありません。
ただし、
「○年までは残す。そのときにもう一度考える」
と、見直す時期だけでも決めておくことをおすすめします。
空き家についてよくある質問
Q.空き家になったらすぐ売らないといけませんか?
必ず売却しなければならないわけではありません。適切に管理しながら保有することもできます。ただし、維持費や管理負担が続くため、将来誰が使うのかを家族で考えておきましょう。
Q.空き家にすると固定資産税はすぐ6倍になりますか?
空き家になっただけで一律に6倍になるわけではありません。住宅用地には固定資産税の課税標準を軽減する特例がありますが、管理不全空家や特定空家について市区町村から勧告を受けると、住宅用地特例の対象から外れる場合があります。
Q.親名義の実家を子どもが売ることはできますか?
子どもだからという理由だけで自由に売却できるわけではありません。所有者本人による手続きや適切な代理権などが必要です。親の判断能力低下が心配な場合は、元気なうちに今後の実家について話しておきましょう。
Q.相続した実家を売る前に片付けるべき?
必ずしも、すべて片付けてから不動産会社へ相談する必要はありません。建物の状態や売却方法によって対応が異なるため、先に査定や相談をしてから片付け方を決める方法もあります。
Q.相続登記をしていない実家があります
2024年4月1日から相続登記が義務化されています。義務化前に相続した不動産も対象です。該当する場合には期限を確認し、早めに法務局や司法書士などへ相談しましょう。
まとめ|空き家になったら「とりあえず放置」にしない
実家が空き家になったからといって、すぐに売却する必要はありません。
大切なのは、
誰が所有しているのか
誰が管理するのか
将来誰かが住むのか
売るのか
貸すのか
解体するのか
を少しずつ整理することです。
まだ決められないのであれば、適切に管理しながら考える時間を持つこともできます。
ただし、
「何もしない」ことと「残すこと」は違います。
残すのであれば管理する。
売るのであれば必要な手続きを確認する。
相続したのであれば登記を確認する。
親が施設へ入ったのであれば、本人が元気なうちに今後について話しておく。
一つずつ進めていきましょう。
思い出のある実家だからこそ、慌てて答えを出す必要はありません。
でも、いつか考えなければならないことなら、家族が元気で話し合えるうちに考え始めることが大切です。
気になったときが、そなえどき。
これからの暮らしを、ちょっと安心に。